レーザー溶接の強み「低希釈」の実力とは!(ステライト1番編)
2025.07.22
高耐熱・高硬度溶材であるステライト1番の溶接って、難しいですよね!
頑張って溶接を成功させたとしても、注意すべき点があるのをご存知ですか?
それは・・・【希釈】です!
溶接における『希釈』とは、溶材成分に対して母材の成分が混ざることです。
「ステライト1番を肉盛りしたのに、なんでやねん!!
思ったより性能が出ていない・・・」
そんなときは、この希釈の対策で解決するかもしれませんよ。
写真は、母材SKD61のΦ24mmの小径製品に、ステライト1番を螺旋状に
ぐるぐる~っと連続でレーザー肉盛り溶接した写真です。
それぞれ、1700wと800wで施工しています。
それぞれ溶接後に切削して、肉盛り表面部の成分を測定しました。
主成分の比較元素(%) | 母材(SKD61) | ステライト1 | 肉盛り後の成分 | |
1700W | 800W | |||
W(タングステン) | - | 13 | 3.5 | 7.6 |
Co(コバルト) | - | 51.5 | 31.5 | 50 |
Cr(クロム) | 5.4 | 30 | 18.2 | 26 |
Fe(鉄) | 89.8 | 1.4 | 42 | 7 |
レーザー出力の差で、どれくらい主成分が変化するのか、見ていきましょう。
まず1700Wの列を見てください。
ステライト1番は元々、鉄はわずか1.4%しか含有せず、51%コバルトですが、
1700Wという高めの出力で溶接したことで、母材がたくさん溶け込んでしまいました。
結果、肉盛り表面部に、鉄の成分が42%も出てきており、
逆にステライト1番の本来の主成分である、コバルト、タングステン等が大幅に減少しています。
これはもはや、ステライト1番とは言えません。
次に800Wを見てみると希釈が小さくなり、鉄の成分も僅か7%含有に抑えることに成功、
ステライト1番の成分が、しっかり残っていることがわかります。
一般的に、レーザークラッディングは、他の溶接工法と比較して
最も希釈が小さいと言われており、コーティングのような使い方も可能です。
そのレーザー溶接であっても、今回のように小径製品に連続施工する場合は、
入熱が大きくなり、想定外の希釈が発生するので注意が必要です。
「ロボット溶接だから簡単でしょ?」と思われるかもしれませんが
いえいえ、とんでもありません!
特に割れやすい盛り材で、しかも品質の良い条件を見つけるのって、すごく大変です。
そんな施工をサポートしてくれるのが、
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